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ボイスドラマ〜Interior Dream

Ks(ケイ)、湯浅一敏、インテリアドリーム
ボイスドラマ〜Interior Dream
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  • ボイスドラマ〜Interior Dream

    ボイスドラマ「ノルディックベンチ」後編

    09-03-2025 | 13 Min.
    後編は、舞台を19世紀のノルウェーに移し、「ノルディックベンチ」に刻まれた伝説を描いていきます。厳しい冬の北極の町で、家具職人エミルと聖歌隊の少女カレンは出会いました。
    許されぬ恋、離れゆく運命、そして吹雪の中の決断。このベンチが、なぜ「永遠の愛を見守る」と語り継がれるようになったのか─その答えが、ここにあります。
    前編とは違った、静かで切ない物語。
    【登場人物のペルソナ】
    ・エミル(25歳)=ノルウェーの『北極の町』アルタに住む家具職人。教会に頼まれて礼拝堂のベンチを作っている。カレンと出会い恋に落ちる。2人で語り合った思い出をいつまでも残すために、ベンチに北極の星座の装飾を彫る(CV:日比野正裕)
    ・カレン(18歳)=クリスマスの時期になると小さな村を回る聖歌隊のなかの1人。初めてアルタにやってきたとき、エミルと出会い、恋に落ちるが、聖歌隊では恋愛は禁止。2人はエミルの作ったベンチに座って語り合った・(CV:桑木栄美里)・
    ■資料/古代遺跡を照らすオーロラの町!ノルウェー・アルタ
    https://skyticket.jp/guide/314110/
    <シーン1/クリスマスの前〜アルタの町の小さな教会の礼拝堂>
    (SE〜吹雪の音〜教会の鐘の音)
    神父:「皆さん、今年もクリスマスが近づいてきました。
    神の恵みに感謝し、心を一つにしてその日を迎える準備をしましょう」
    エミル:ノルウェー。北極の町、アルタ。
    19世紀の中ごろ。
    田舎町の小さな教会で、年老いた神父が語り出す。
    神父:「来週には聖歌隊もやってきます。
    この礼拝堂もいつもとは違った温かな歌声で満たされるでしょう」
    エミル:私の名はエミル。駆け出しの家具職人だ。
    アルタで生まれ、アルタで育った。
    いまは、神父さまに頼まれて、ベンチを作っている。
    あとは、
    聖歌隊席に置く4脚のベンチを作ればすべて完了だ。
    小さな教会だから、ベンチの数も多くない。
    礼拝堂に3人かけのベンチが10脚。
    聖歌隊席には2人かけのベンチが4脚。
    聖歌隊の人数も10人に満たないのだから問題ない。
    さあ、急ごう。
    来週、聖歌隊がやってくるまでに、完成させないと。

    <シーン2/小さな教会に聖歌隊がやってきた>
    (SE〜教会の鐘の音〜ゴスペル〜曲終わりで)
    エミル:今年の聖歌隊は1人多い。
    大人の女性たちに混ざって、1人だけ、多分10代、の少女が歌っていた。
    ひときわ澄んだ歌声に、心が洗われるようだ。
    と、感心している場合じゃない。
    僕はゴスペルを聴き終えると、神父さんに目配せをして
    工房へと急いだ。
    (SE〜工房の環境音)
    今晩無理すれば、あと一脚くらい、ベンチは作れるだろう。
    少女は1人、立って歌っていた。
    本当に悪いことをした。
    罪滅ぼしの意味も含めて、聖歌隊席に追加したベンチには
    心をこめて北極の星座を彫刻する。
    北極星(ポラリス)を含む小熊座。
    ポラリスは、永遠の導きと不変の象徴。
    これは彼女のために。
    彼女が座る左端に掘った。北斗七星がしっぽの、大熊座(おおぐま座)。
    航海や旅路の守り神だから。彼女へ。
    W字の形をしたカシオペア。
    美しさと知恵の象徴ってことはこれも彼女かな。
    <シーン3/小さな教会の礼拝堂に最後のベンチを納品>
    (SE〜朝の環境音/小鳥のさえずり/ベンチを設置する音)
    カレン: 「おはようございます」
    エミル: 「あ」
    カレン: 「まあ、なんて美しいベンチ」
    エミル: 「あ、ありがとうございます」
    カレン: 「やだ、こんな小娘に敬語なんて」
    エミル: 「いや、だって・・・」
    カレン: 「カレンって呼んでください」
    エミル: 「はい、わかりました・・・」
    カレン: 「あなたのお名前は?」
    エミル: 「エミルといいます・・・」
    カレン: 「いいお名前」
    エミル: 「あ、ありがと・・・」
    カレン: 「ベンチに彫ってあるのは星座?」
    エミル: 「うん、北極の星座」
    カレン: 「へえ〜。夜じゃないのにキラキラ輝いてる」
    エミル: 「金箔と銀箔を埋め込んであるから」
    カレン: 「座ってもいいかしら、エミル」
    エミル: 「あ、どうぞ・・・カレン・・」
    君のために作ったんだ・・・とは言えなかったけど。
    カレンは、右端のカシオペアに座った。
    ギリシャ神話のカシオペアは、美しさを誇示するキャラクター。
    そのために神々の怒りを招いて破滅をもたらした。
    美しいカレンには、そうならないでほしいな。
    聖歌隊席のベンチは、向かって右側に2脚、左側に2脚・・
    だったけど、いまは左側2脚の横に、少し小ぶりなベンチが1脚。
    そこにカレンがちょこんと座る。
    そんなに大きくないベンチだけど、小柄なカレンが座ると
    不釣り合いで思わず笑った。
    カレン: 「このベンチは何人がけ?」
    エミル: 「一応2人がけだよ」
    カレン: 「そっか。じゃあエミル、ここに座って」
    エミル: 「そんな・・・」
    躊躇いつつ、ポラリスにもたれる。
    カレンとは距離を保ち、僕はベンチの右端に寄って。
    行き場のない北斗七星が、カレンと僕の間で煌めいていた。
    <シーン4/クリスマス目前〜小さな教会の礼拝堂/聖歌隊席>
    (SE〜小鳥のさえずり〜教会の鐘の音)
    カレン: 「おはよう、エミル」
    エミル: 「おはよう、カレン」
    早朝。
    誰もいない礼拝堂で、僕たちは語り合った。
    カレンの家は、南の町、トロンハイム。
    お母さんと2人暮らしだという。
    お母さんは、敬虔なクリスチャン。
    カレンが18歳になるとすぐに聖歌隊に参加させた。
    カレンも歌うことが好きだったから、
    喜んで小さな村々を回っているそうだ。
    確かに、透き通ったカレンの歌声は、
    まるで、天使の讃美歌。
    瞳をキラキラさせて話をするカレンに
    ステンドグラスから朝の光が差し込む。
    それはまるでオーロラのように、幻想的な光の色彩を作り出す。
    僕は、朝のこの時間のために
    毎日を生きているような気持ちだった。
    <シーン5/クリスマスイブ〜小さな教会の礼拝堂>
    (SE〜教会の鐘の音〜ゴスペル〜曲終わりで)
    エミル: クリスマスイブ。
    その日、カレンは聖歌隊にいなかった。
    風邪でもひいたのか。
    違った。
    カレンのいる聖歌隊は、恋愛禁止。
    ましてや、カレンは未成年。
    聖歌隊の皆も、神父さんも僕には何も教えてくれなかった。
    真実を知ったのは、礼拝に来る人たちから。
    聖歌隊から外されたカレンはひとり実家へ戻っていったという。
    いや、待てよ。
    確かカレンの家は、遠く離れたトロンハイム。
    そんなところまで1人で帰れるわけがない。
    僕はクリスマスミサも早々に、吹雪の外へ飛び出す。
    まさか、まさか。
    1人でトロンハイムへ?
    この吹雪のなか、山越えを?
    いったいどれだけ距離があるか知っているのか?
    深い森やフィヨルドを抜けていかなきゃならないのに。
    僕はカレンを追って、雪山へ入った。
    行く手を阻むラーガ山脈の険しい峰。
    視界は1メートル先も見えない。
    氷点下の風は肌を刺し、息を吸うたびに肺が痛む。
    カレンの足なら、まだそう遠くまでいけるはずはない。
    スカンダ渓谷の入り口まできたとき、
    針葉樹の大木の根元に白いかたまりを見つけた。
    それは雪に埋もれたカレンの小さな体。
    クリスマスツリーから落ちたオーナメントのように
    美しい顔にも雪が降り積もる。
    「カレン!」
    僕はカレンを抱き上げると、今来た道を戻っていった。
    <シーン6/クリスマスの翌日〜教会の庭のベンチ>
    (SE〜夜の環境音)
    エミル: アルタに戻ったのは、イブが明けたクリスマスの未明。
    教会の扉は閉ざされ、町は静まり返っている。
    いつのまにか吹雪はおさまり、
    見上げると暗闇の隙間からオーロラが夜空を彩っている。
    主人(あるじ)のいなくなったベンチは教会の庭に置かれていた。
    僕は冷たくなったカレンを抱き、ベンチに座らせる。
    ■BGM〜「インテリアドリーム」
    ああ、カレン。寒かったろう。凍えただろう。
    僕は、カレンの横に座って彼女を強く抱きしめる。
    体温が、カレンの魂を温めていく。
    ポラリスとカシオペアにはさまれて
    北斗七星の前で僕たちは・・・
    神父: 「アルタの町は静けさに包まれ、
    いつしかまた降り出した雪が
    ノルディックベンチに佇む2人の上に、
    ゆっくり静かに降り積もっていきました」
    ※ **ノルディックベンチのディテール**  
    「ノルディックベンチ」は北欧家具の特徴を象徴する作品で、以下のディテールが施されています。  
    - **素材と質感**:北欧の厳しい自然環境に耐えるため、耐久性のあるオーク材やアッシュ材を使用。木目の美しさを最大限に活かし、自然な風合いを強調。  
    - **デザイン**:背もたれと座面は緩やかなカーブを描き、人間工学に基づいた快適な座り心地を提供。無駄のないミニマルなデザインでありながら、装飾として雪の結晶や北極の星空をモチーフにした彫刻が施されている。  
    - **仕上げ**:オイル仕上げで、木材の自然な温もりを引き立てる。北欧の冬の光を反射するような、柔らかな艶を持つ。  
    このベンチには「永遠の愛を見守る」とされる伝説が込められており、特に冬のオーロラの下でその魅力が最大限に引きだされます
  • ボイスドラマ〜Interior Dream

    ボイスドラマ「ノルディックベンチ」前編

    09-03-2025 | 11 Min.
    インテリアデザインの世界に生きる若き二人─建築士の彼と、インテリアコーディネーターの彼女。
    最悪の出会いから始まる二人の関係が、1年という時間の中でどのように変わっていくのか。北欧家具のデザインと、伝説のベンチがどんな意味を持つのか。「インテリア」とは、単なる家具や空間の話ではなく、「人の暮らしと記憶を紡ぐもの」でもあります。その本質が、この物語を通じて少しでも伝われば嬉しいです。
    そして、この物語は Spotify・Amazon・Apple などのPodcastプラットフォーム、服部家具センター「インテリアドリーム」公式サイト でもお聴きいただけます。
    【登場人物のペルソナ】
    ・男性(25歳)=大手の建設設計会社で働くエンジニア。働きながら将来的にはインテリアデザイナーを目指して勉強している。12月の声を聞いた頃、本社東京への転勤の話が持ち上がる(CV:日比野正裕)
    ・女性(26歳)=ハウスメーカーで自社物件のインテリアコーディネーターをしている。海外研修をしたくて入社した当初から人事部に志望を出していた。来春のLA支社開設に伴い、支社専属コーディネーターの候補として自分の名前があがっていた(CV:桑木栄美里)

    【Story〜「ノルディックベンチ/前編」】
    ※今回は試験的にモノローグがシーンごとに変わります
    <シーン1/最悪の出会い(1年前)>
    (SE〜展示会の環境音/BGMはクリスマスソング)
    女性:「正直に言わせてもらいますけど、この家具。
    北欧風のダイニングってテーマに全然合ってないですよね。
    まず、シルエットが重すぎる。
    北欧家具の魅力って、シンプルで軽やかなラインと、
    視覚的にも空間的にも“抜け感”を生むデザインにあるんです。
    これじゃ、空間全体が圧迫されてしまう」
    男性: インテリアショップのワークショップ。
    出品者同士で語り合うオフ会で
    いきなりの先制パンチ。
    彼女、確か、ハウスメーカーのインテリアコーディネーターだったよな。
    女性:「素材のチョイスも疑問ね。
    北欧スタイルは、オークやアッシュみたいに明るい色味の天然木材が主流でしょ。
    でもあなたのベンチは色味が暗くて、まるで重厚な和風家具みたい」
    男性:「な・・」
    女性:「あと、プロポーションがアンバランスだわ。
    チェア自体が大きい割に、座面の高さが低すぎる。
    北欧のダイニングセットは、家族や友人が集まる“ソーシャルスペース”。
    座り心地やテーブルとの相性をもっと考えるべきじゃないですか?」
    男性:「この・・言わせておけば・・」
    しかし、確かに言われることには筋が通っている。
    そもそも僕はまだプロのインテリアデザイナーじゃない。
    今回、プロアマ問わずに作品を募っていたワークショップに出品したんだ。
    僕は大手の建設コンサルタント会社で働く建築設計士。
    まだ4年目だけど、二級建築士の資格を持って建築図面を引いている。
    でも今日のワークショップは仕事じゃない。
    実はいま、インテリアデザインの勉強をしているんだ。
    それで、『北欧デザイン』をテーマにしたこのワークショップに
    作品を作って応募したってわけ。
    撃沈。
    苛立って睨みつける僕に、彼女は余裕の笑みを返してきた。
    <シーン2/会長宅リフォームのプレゼン>※最悪の場合、会長は湯淺・・
    (SE〜プレゼンルームの環境音)
    女性:「今回の会長宅のリフォームでは、北欧スタイルを取り入れたいと思います。
    自然素材の家具と柔らかな間接照明を活かした温かみのある空間。
    リビングには、明るいオーク材のフローリングと、
    シンプルなラインのソファを中心に、家族が集まりやすい配置を考えました。
    壁面は自然光を反射するためのライトグレーのペイント。
    昼間でも柔らかな光が部屋全体に広がるようにしています・・」
    会長:「北欧スタイルねえ。
    良さはわかるんだけど、ちょっと軽くないかね」
    女性:「もちろん、会長のおっしゃる重厚感も大切だと考えています。
    ダイニングにはウォールナットのテーブルを配置して、
    高級感と重厚感を演出しました」
    会長:「ウォールナットも悪くないんだけどなあ。
    なんかピンとこないんだよ」
    女性:「そうですか・・」
    男性:「会長」
    会長:「ん?きみは?」
    男性:「建築士の設計コンサルタントです」
    女性:「え?あなた・・・」
    プレゼンルームの隅っこから声をあげたのは
    この前ワークショップにいた青年。
    男性:「会長、お孫さんはいらっしゃいますか?」
    会長:「ああ、いるよ。まだ小学生だけど」
    男性:「さきほど彼女、”家族が集まる場所”って言いましたよね。
    ウォールナットは見た目の重厚感だけでなく、
    すごく耐久性が高い素材なんです。
    例えば、お孫さんがテーブルの上で宿題をしたり、絵を描いたりしても、
    傷がつきにくい。
    汚れにも強いから、食べこぼしても簡単に拭き取れます」
    会長:「ほう」
    男性:「それにオーガニックで環境にも優しい。
    化学処理が少なく、天然のままの風合いを生かしているので、
    お孫さんが触れても安全です」
    会長:「なるほど」
    男性:「何より、長年使い込むほどに味わいが増します。
    家族が集まるたびに、このテーブルに思い出が刻まれていく。
    ウォールナットと一緒に家族の年輪を刻んでいってはどうですか?」
    会長:「うむ」
    女性: 言い終えたあと、彼は一瞬私の方へ視線を送り、ウィンクした。
    あのとき私、あんなに厳しいこと言っちゃったのに。
    でも、居心地の悪さより、救ってくれた嬉しさの方が勝(まさ)った。
    施主も私たちも英顔でプレゼンルームをあとにする。
    この一件以来、私と彼の距離は急速に縮まった。
    彼は25歳。私よりひとつ年下。
    設計コンサルタントとして働きながら、
    インテリアデザイナーを目指している。
    私たちは食事を共にする仲となり、
    コーディネーターとデザイナーとしてリスペクトし合いながら
    季節が巡っていった。
    <シーン3/1年後のクリスマス>※TMスタート後「え?」が多くてすみません
    (SE〜街角の環境音/クリスマスソング)
    女性:「あのベンチ、なあに?」
    男性: 彼女と一緒に過ごすようになってから最初のクリスマス。
    インテリアコーディネーターとインテリアデザイナーの
    デートスポットは・・・
    そう、インテリアショップ。
    最近の家具屋さんはオシャレなところが多いし、
    僕たちはここにいれば、何時間でも過ごすことができた。
    女性:「昨日まであんなんなかったよね?」
    男性: リビングとダイニングの真ん中。
    ベンチは部屋と部屋の間に置かれていた。
    女性:「なんか、書いてある・・・
    ノルディックベンチ?」
    男性:「君の好きな北欧スタイルだね」
    女性:「ノルウェーのアルタ。
    『北極の町』の教会に置かれていたベンチだって」
    男性:「へえ〜。なにか謂れがあるのかな」
    女性:「悲恋伝説らしいわ。
    その代償として、このベンチに座るカップルは結ばれる・・」
    男性: ドキっとした。
    実は僕のカバンには、辞令が入っている。
    東京支社への転勤の辞令。
    僕は今日、それを彼女に告げなければならない。
    女性:「どうする?」
    男性:「いいじゃん。座ろうよ」
    女性:「うん」
    男性: 僕がベンチに腰掛けると、
    彼女もゆっくりと腰をおろした。
    女性:「実はね、話したいことがあるの」
    男性:「え・・」
    女性:「私、いまの会社、ハウスメーカーに入ってから
    ずうっと海外勤務希望申請をだしてたの、知ってるでしょ」
    男性:「うん・・」
    女性:「それがね、急に決まっちゃったのよ」
    男性:「あ・・・」
    女性:「来年の春、LAに支社を開設するんだって」
    男性:「そう・・・」
    女性:「申請だしてたのさえ、忘れてたのに」
    男性:「よ、よかったじゃないか・・・」
    女性:「強制ではないんだけど、独身だと断りにくいから」
    男性: 彼女の言葉が途切れたのをきっかけに、僕も彼女に告白する。
    男性:「実は僕も君に話があるんだ・・・」
    女性:「え・・」
    男性:「これを見てほしい」
    女性:「なに」
    男性: 僕がカバンの中の辞令を彼女に手渡すと・・
    女性:「東京・・転勤・・・?」
    男性:「来年早々から」
    女性:「本社勤務、ってことは栄転ね」
    男性:「まあ、そうなるかな」
    女性:「おめでとう」
    男性:「いや、いかない」
    女性:「え?」

    ■BGM〜「インテリアドリーム」
    男性: 僕は彼女から辞令を返してもらい、
    そして、目の前で・・
    女性:「なにしてんの?」
    男性:「なにって、辞令を破いてるんだよ」
    女性:「どうして?」
    男性:「僕がインテリアデザイナーを目指しているの、
    君が一番知ってるじゃないか」
    女性:「でも・・」
    男性:「これでやっと踏ん切りがついた」
    女性:「そんな・・」
    男性:「だから、君の海外勤務は・・・」
    女性:「もう断ったわ」
    男性:「え?」
    女性:「結婚する、ってウソついちゃった」
    男性:「それ、ウソじゃない」
    女性:「え?」
    男性:「結婚しよう」
    女性:「本気?」
    男性:「もちろん。返事は?」
    女性:「Yes!に決まってるじゃない」
    男性: なんだか、いままで悩んでたことがおかしくなる。
    ノルディックベンチ。
    説明書きにあるように「永遠の愛を守る」という伝説は生きているようだ。
    『永遠の愛を守る』ノルディックベンチに座って
    僕たちは未来を語り合った。
    (SE〜教会の鐘の音)
  • ボイスドラマ〜Interior Dream

    ボイスドラマ「家族の食卓/もうひとつの物語」後編

    08-03-2025 | 8 Min.
    東京での生活が始まり、紅葉は夢を追いかけて日々奮闘します。
    けれど、思い描いていた理想と、現実の厳しさは違うもの。
    そんな中、彼女にとって心の支えとなるのは、先輩との交流、そして父の言葉でした。
    「家具は、家族をつなぐもの。」
    父の仕事に無関心だった紅葉が、ある仕事を通じてその意味を知ることになります。
    そして迎える、久しぶりの帰省。
    紅葉は、父とどんな言葉を交わすのでしょうか。
    それでは、後編をお楽しみください。
    【登場人物のペルソナ】
    ・娘:紅葉(くれは)/声優の卵(21歳)=真面目で一途。子供の頃から声優に憧れ、夢を追いかけて東京へ上京する。感情を表に出すことはあまり得意ではないが、家族への深い思いを胸に秘めている。実家の家具屋で育ったため、無意識に家具に対する愛着があるが、家業を継ぐという両親の期待に反発していた(CV:桑木栄美里)
    ・先輩:冬紀(25歳)/若手声優=沖縄出身。優しく親切で、自然体で人に接するが、実は沖縄での家族や地元を大切に思っており、東京での生活にも孤独を感じることがある。娘にとって、東京での厳しい生活の中で心の支えとなる先輩。彼の優しさに触れるたびに、紅葉は自分の父の面影を感じ、心の距離が近づいていく(CV:日比野正裕)
    <シーン1/声優養成所>
    (SE〜養成所の環境音)
    娘: 「おつかれ様でした!」
    先輩: 「おつかれ!今日もバイト?」
    娘: 「はい!」
    先輩: 「たしか・・フィットネスジム・・だっけ?」
    娘: 「はい、自由な時間に働けるので助かってます」
    先輩: 「だけどあんまり無理しないようにね。
    昼も、和食屋さんでお皿洗ってるんでしょ?
    うちのレッスンは、ダンスもまざってるから体力消耗するし」
    娘: 「あ、ダンスは小さい頃から踊ってたんで」
    先輩: 「それでも疲れる。人間だから」
    娘: 「大丈夫です!」
    先輩: 「まあ、若いからがんばれるんだろうけど」
    娘: 「ありがとうございます!」
    先輩: そういえば、この子、最初の挨拶で面白いこと言ってたよな。
    なんだっけな。え〜っと・・
    ■一瞬、回想シーン
    娘: 「みなさん、はじめまして!
    今日から養成所でお世話になります!よろしくお願い申します!
    養成所って、私にとっては夢を育てる場所。
    だから、”養成”という文字は、フェアリーの”妖精”。
    私はいつも脳内変換しています!」
    先輩: それで、記憶に残ってるんだよな。
    人に覚えてもらう、ってのもこの仕事じゃ重要だから。
    実際僕もそれ以降、彼女のこと気になってるんだよな。
    <シーン2/夜の渋谷/バイト終わりの紅葉>
    (SE〜繁華街の環境音)
    娘: 「お先に失礼します!」
    先輩: 「あれ?」
    娘: 「あ、先生!」
    先輩: 「おいおいやめてくれよ、こんな往来で”先生”だなんて」
    娘: 「だって先生じゃないですか?」
    先輩: 「養成所でレッスンしてるってだけだろ。
    せめて”先輩”にしてくれ。
    僕はまだ25歳なんだぜ」
    娘: 「年齢なんて関係ないと思います。
    たとえ小学生だって、私の師匠なら”先生”だわ」
    先輩: 「そうか。
    にしても、遅くまでバイト、がんばってるね」
    娘: 「はい。
    だって東京って家賃すっごく高いんだもの」
    先輩: 「君は東京の人じゃなかったね」
    娘: 「そうです、東京でてきてびっくりしました。
    バイトしてもバイトしても家賃と授業料に消えていく感じ」
    先輩: 「そうだよなあ、駆け出しの声優は結構バイトしてるもんなあ。
    ましてや、養成所なら出て行く方が多いだろうし」
    娘: 「そうなんです。だから自炊もしてるんですけど
    東京は物価も高い」
    先輩: 「自炊してるんだ。立派なもんだ」
    娘: 「なんで?たんに生活費を浮かすためですよ」
    先輩: 「自炊は体にもいいだろ。
    とにかく体が一番だからな。
    あとは、規則正しい生活を送ること。
    ってそれは難しいか。
    まあ、無理せずにがんばって」
    娘: 「先輩」
    先輩: 「ん?なんだ?」
    娘: 「先輩って、お父さんみたいですね」
    先輩: 「なんじゃ、それ?
    まだ25だって言っただろ」
    娘: 「ふふ」
    先輩: 結局、彼女とは、明るい夜の街をいつまでも話しながら歩いた。
    話は尽きず、一駅歩くくらいのボリュームだっただろう。
    <シーン3/収録スタジオ/初めての仕事>
    (SE〜スタジオの環境音/「はい本番!はい、キュー!」)
    娘: 「家具を選ぶときは、まず目を閉じてください」
    先輩: 「はい、閉じました」
    娘: 「そこに、家族の笑顔は見えますか?」
    先輩: 「え?」
    娘: 「それが、家具を選ぶ基準です」
    (SE〜スタジオの環境音/「よしOK!このテイクでいこう」)
    娘: 「ありがとうございました!」
    先輩: 音響監督が笑顔でうなづく。
    彼女が声優養成所に通い始めてもうすぐ1年。
    養成所から所属へ。
    妖精が羽ばたく時期。
    初めて彼女に入った仕事は、なんと僕との掛け合いだった。
    それは、家具屋さんの企業アニメーション。
    どうしてなかなか、いい表現じゃないか。
    娘: 「おつかれさまです」
    先輩: 「おつかれ。一発オーケーかあ。
    すごくよかったよ」
    娘: 「本当ですか?」
    先輩: 「ああ、レッスンのときより、何倍もいい表情だ」
    娘: 「実は・・・うちの実家、家具屋さんなんです」
    先輩: 「だから・・・言葉の意味もちゃんと理解してたんだね」
    娘: 「はい、家族をつなぐ家具。いつも父が言っている言葉です」
    先輩: 「そっか・・・
    ねえ、つかぬことを聞くけど・・・
    東京へ来てから、何回実家へ帰ったの?」
    娘: 「あ・・」
    先輩: 「うん?」
    娘: 「一度も帰ってない・・・」
    先輩: 「じゃあ、そろそろ帰るタイミングじゃない?」
    娘: 「はい」
    ■BGM〜「インテリアドリーム」
    <シーン4/東京駅/新幹線ホーム>
    (SE〜新幹線ホームの環境音)
    先輩: 仕事ができる人は、行動するのも早い。
    次の日の朝、彼女は新幹線のホームに立っていた。
    娘: 「先輩、忙しいのにこんなとこにいていいんですか?」
    先輩: 「うん、昨日君が明日帰るってきいたら
    なんだか心配になっちゃってさ」
    娘: 「新幹線くらい1人で乗れますよ〜」
    先輩: 「いや、そういう話じゃないだろ」
    娘: 「やっぱり先輩、お父さんみたい」
    先輩: 「はいはい。
    じゃあお父さんとようく話してくるように。
    東京へ戻ったら、家具の話、食卓の話、聞かせてくれ」

    娘: 「了解しました」
    先輩: まるでLINEの絵文字のような笑顔で、
    彼女は新幹線に乗り込んだ。
    遠ざかるのぞみ号の彼方から、お父さんの声が聞こえる・・
    ような気がした。
    父: 「おかえり」
  • ボイスドラマ〜Interior Dream

    ボイスドラマ「家族の食卓/もうひとつの物語」前編

    08-03-2025 | 7 Min.
    「家族の食卓/もうひとつの物語」は、家具職人の父と、声優を夢見る娘の心の交流を描いたものです。
    「家族の食卓」は、単なる食事の場ではなく、思い出や愛情が積み重なる特別な空間。
    けれど、親子の関係はいつも順風満帆とはいかず、時にはすれ違い、ぶつかることもあります。
    それでも、どこかでお互いを思い合っている—そんな二人の物語をお届けします。
    本作は 服部家具センター「インテリアドリーム」 の公式サイトをはじめ、SpotifyやAmazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでもお楽しみいただけます。
    ◾️登場人物のペルソナ
    ・娘:紅葉(くれは)/専門学校生(20歳)=真面目で一途。子供の頃から声優に憧れ、夢を追いかけて東京へ上京する。感情を表に出すことはあまり得意ではないが、家族への深い思いを胸に秘めている。実家の家具屋で育ったため、無意識に家具に対する愛着があるが、家業を継ぐという両親の期待に反発していた(CV:桑木栄美里)
    ・父(59歳)=インテリアショップのオーナー兼家具職人。無口で職人気質、細やかな技術と頑固さを持ち合わせるが、家族への愛情は深い。言葉では多くを語らないが、家具を通じて娘に自分の気持ちを伝えようとしている。娘が家業を継がずに上京することを不安に感じ、心配しながらも彼女の夢を応援したいという気持ちを隠している(CV:日比野正裕)
    【Story〜「家族の食卓/もうひとつの物語/前編」】
    <シーン1/20歳の食卓>
    (SE〜食卓の環境音)
    父: 「声優・・?
    そんなフワフワした職業じゃなくて、まじめに将来を考えなさい」
    娘: 「別にうわついてなんかいないもん!
    なんにも知らないくせに」
    娘: 売り言葉に買い言葉。
    喧嘩なんて、したくもないのに・・
    お父さんなんて、大っ嫌い。
    父: 「おまえには、いずれうちの家業も継いでもらわないと」
    娘: 「継がないから。
    私、家具なんて興味ない」
    父: 「なんだと」
    娘: お父さんったら、言ってることが、まるっきり昭和。
    タイムマシンに乗って1970年代に戻ったみたい。
    って、生まれる前の時代なんて知らんけど。
    父: 「大学を卒業したら家の手伝いを・・」
    娘: 「大学卒業したら東京へ行くの」
    父: 「と、東京!?」
    娘: 「卒業後は1人暮らしするって、ずうっと言ってるじゃない」
    父: 「東京なんて聞いてないぞ」
    娘: 「東京じゃないと、ちゃんとした声優事務所なんてないもん」
    父: 「母さんは知ってるのか?」
    娘: 「お母さんにはもう話したから」
    父: 「なに・・?」
    娘: 「賛成してくれたもん。
    お父さんだけだよ。
    そんな古臭いこと言って反対してるのは・・
    父: 「うるさい・・」
    娘: 怒りの感情は6秒で収まるっていうけれど、
    お父さんのテンションもだんだん下がっていく。
    結局、私の希望は認められ、晴れて春から1人暮らしとなった。
    <シーン2/東京〜アパート探し>
    (SE〜東京の雑踏)
    娘: 「お父さん、
    何回も言ってるけど、お部屋くらい自分で探せるって」
    父: 「ばか言うな。
    なにも知らない田舎者がアパート探そうと思ったって
    不動産屋にいいように騙されるだけだ」
    娘: 「ちょっと、それ、不動産屋さんで言うせりふ?」
    少し困ったような表情を見せたあと、
    不動産屋さんは手際よく、いくつか部屋を見せてくれた。
    これが、内見、ってやつ?
    (SE〜鍵を開錠する音)
    父: 「ここはだめだ。
    リビングが南向きじゃないと、陽も当たらないし、
    電気代もかかるからだめだ」
    娘: このご予算では、これ以上のお部屋はちょっと・・
    と言って、不動産屋さんが口籠る。
    結局、4件目の内見でやっと、少しだけ明るい部屋に出会った。
    とは言っても、電気が通っていないと、ほんのり暗い。
    私は、薄暗い部屋の真ん中に立って、あたりを見回す。
    娘: 「ねえ、お父さん。
    お部屋って、な〜んにもないと、
    こんなに暗くって、寒いんだ」
    父: 「ああ、そうだ。
    だから、どんな部屋にも、まず食卓を置くんだよ」
    娘: 「こんな狭い部屋に食卓なんて置いたら、よけい狭くなっちゃう」
    父: 「狭くなるんじゃない。あったかくなるんだよ」
    娘: 「え・・」
    父: 「別に大きな食卓を置け、って言ってるんじゃない。
    2人用でも、木の香りがして、優しい食卓にすれば
    ここより5度はあたたかくなるぞ」
    娘: 優しい食卓?
    お父さんらしい表現だな。
    だけど、私にもわかる。
    うちは大家族だったから大きな6人用の食卓。
    そこはいつも笑顔と、美味しい香りが溢れていた。
    笑い声が飛び交う、暖かい場所。
    考えたら、ベランダに面した南向きのリビングより
    食卓の方があたたかかった気がする。
    父: 「まあ、あとはお前次第だ。
    無理せずにがんばりなさい。その・・・なんだ・・」
    娘: 「声優?」
    父: 「ああ・・。
    一生懸命やって、だめだったら戻ってくればいい」
    娘: 「また、昭和の言い方して」
    父: 「しょうがないだろ。昭和の人間なんだから・・」
    娘: 「ねえ、お父さん」
    父: 「どうした?」
    娘: 「この部屋に合う食卓、選んでくれる?」
    ■BGM〜「インテリアドリーム」
    父: 「え・・
    あ・・わかった。
    お前に似合う食卓を選んでやるよ」
    娘: 「ありがとう」
    父: 「あったかい部屋にするんだぞ」
    娘: 「うん」
    父: 「ちゃんと自炊して規則正しい生活を送ること」
    娘: お父さんが選ぶ、私の食卓。
    実物を見なくても、なんとなくわかる。
    木の香りが優しくて、
    ずうっと座っていたくなる食卓。
    目を閉じれば、お父さんやお母さんの笑顔が浮かんでくる食卓。
    ほら、笑い声まで聞こえてくる。
    夢をかなえるのに一番必要なのは、
    やっぱりお父さんの不器用な応援だな。
    もう一度言うね。
    ありがとう、お父さん。
  • ボイスドラマ〜Interior Dream

    ボイスドラマ「オーロラの彼方に」後編

    06-03-2025 | 9 Min.
    前編では、オーロラに魅せられたヒロインと、彼女を想う先輩研究者の静かな交流が描かれました。後編では、物語が大きく動きます。
    研究に打ち込みすぎて、自分の体を顧みない彼女。そんな彼女がある日、倒れてしまう…。
    「オーロラ姫」を救ったのは、科学でもデータでもなく、たった一つの“想い”でした。
    この物語は、科学と愛、そして眠りが交差する不思議な縁の物語。
    果たして、彼女は「本当に安らげる場所」を見つけることができるのでしょうか?
    【登場人物のペルソナ】
    ・女性(26歳)=大学院生で天文学を専攻。太陽風と地球の磁場の相互作用によって生じるオーロラについての研究に没頭している。最近、研究のプレッシャーと不規則な観測スケジュールにより、睡眠障害に悩まされている。オーロラの研究にのめり込みすぎているため、周りからは尊敬と揶揄をこめて「オーロラ姫」と呼ばれている(CV:桑木栄美里)
    ・男性(28歳)=女性と同じ大学院で天文学を研究している先輩。博士号終了後も国立天文台からのオファーを期待してポスドク(博士研究員)としてキャリアを積んでいる。「オーロラ姫」のことを慕っているが、なかなか言い出せないでいる(CV:日比野正裕)
    <シーン1/先端科学研究所>
    (SE〜ラボの環境音)
    女性: 「スーパーカミオカンデからのオファー!?私が?」
    男性: 彼女が通常より1オクターブ高い音階で驚く。
    まあ、無理もない。
    大学が運営する先端科学研究所で天文学を研究して、
    去年の年末に、オーロラの出現を予測したんだから。
    オーロラ姫の面目躍如だ。
    それにしても、スーパーカミオカンデとはね。
    東京大学宇宙線研究所が運用する世界最大の宇宙素粒子観測装置。
    ニュートリノという素粒子を観測する施設からのオファーか。
    期待の高さがわかるってもんだな。
    女性: 「去年のオーロラ出現以来、
    毎日毎日観測室とデータ解析室の往復を繰り返してるのよ。
    睡眠障害だった1年前より、睡眠不足だわ」
    男性: そうだった。
    オーロラ姫はずうっと睡眠障害で悩んでいたんだ。
    彼女の言葉を聞いた僕は、いてもたってもいられなくて
    いろんな文献を調べたんだっけ。
    あ、いや。
    彼女のことが好きだとか、そういう直接的な意味じゃなくて。
    なんとなく・・・
    あれ?やっぱり、好きなのかな・・・
    まいいや。
    それで結局、治療もさることながら
    ベッドや寝具も重要、と厚労省のガイドブックにあったから。
    足を向けたのが、インテリアショップ。
    そこで真っ先に目についたのが、電動リクライニングベッドだった。
    高機能なツーモーターでありながらリーズナブル。
    これなら研究員の僕でも手が出るかな・・
    なんて思ってたらそのネーミングを見て驚いた。
    電動リクライニングベッド”オーロラ”。
    まるで、僕の心を突き動かすように
    目が離せなくなった。
    そのとき、同じベッドを見つめていたのが、なんとオーロラ姫。
    偶然はドラマを生む。
    なんてことはありえないんだな。
    そのあと、少しだけ彼女と話し、お茶を飲んで別れた。
    彼女と2人っきりの空間で話をしたのは、
    あとにも先にもこの日だけ。
    僕の思いは、オーロラの光のように、儚く消えていった。
    <シーン2/先端科学研究所(実験室)>
    (SE〜ラボの環境音)
    女性: 「あら?今日は先輩と2人だけ?」
    男性: え?
    あ、そうか。
    今日は休日だったっけ。
    最近はみんな、休日は休んでるからなあ。
    当たり前か。
    待てよ。
    オーロラ姫は・・・彼女は・・
    全然休んでないんじゃないか。
    嫌な予感。
    不安が心をよぎる。
    女性: 「お腹すかない?
    なんだか血糖値が下がってきちゃったみたい」
    男性: 「ああ、もうこんな時間じゃないか。
    夢中になって観測してると、時間も忘れちゃうんだな」
    女性: 「そうよぉ。
    相対性理論でいうタイムマシンの原理ね」
    男性: なんか違うような気もするけど。
    ああ、体の疲れがピークだ。
    力を抜くと瞼が閉じていく。
    そのとき・・・
    (SE〜人が倒れる音とガラスの割れる音)
    男性: 「オーロラ姫!?」
    大きな音に目を見開くと・・
    高性能天体望遠鏡が床に倒れ、
    その上にオーロラ姫が横たわっていた。
    顔色は失せ、急激な発汗と震え。
    これは・・・低血糖症だ。
    やがて、痙攣が彼女を襲う。
    そのまま意識を失った。
    少しためらいながら、僕は彼女を抱き起こす。
    そのまま仮眠室のベッドへ。
    だが、ほどなく、脈が早くなり、呼吸が荒くなる。
    そして・・呼吸音は聞こえなくなった。
    まずい。
    こんなときは・・・
    わかっている。大学時代、ライフセーバーをやっていた。
    戸惑っているときではない。
    オーロラ姫の首を軽く後ろに傾けて、下あごを持ち上げる。
    気道を確保してから、唇を合わせて、息を吹き込んだ。
    その間に、胸が落ちるのを確認する。
    人工呼吸を2回するごとに、呼吸と脈拍をチェック。
    僕はオーロラ姫の呼吸が回復するまで人工呼吸を続けた。
    <シーン3/病院のベッド>
    (SE〜心電図の音)
    女性: 「起きて・・・ねえ、起きて」
    男性: え?
    ここは・・・病院?
    女性: 「あなたまで倒れないでよ」
    男性: 思い出した。
    僕は、オーロラ姫に人工呼吸で救命措置をしたあと、
    救急車を呼んで病院に運んでもらったんだ。
    そうか、付き添っているうちに、僕も眠っちゃったんだな。
    女性: 「ERドクターに言われたわ。
    呼吸が戻ったのは、適切な救命措置のおかげだって」
    男性: 救命措置・・・
    女性: 「先輩が迅速に人工呼吸と心配蘇生をしてくれたから
    後遺症もなくこうして生きていられるのね」
    男性: 「それは・・・たまたま僕が以前ライフセーバーだったから」
    女性: 「ううん。
    オーロラ姫を死の眠りから目覚めさせてくれたのは
    王子様のキスでしょ」
    男性: 「え・・・」
    ■BGM〜「インテリアドリーム」
    女性: 「ありがとう」
    男性: 「そんな・・お礼なんて」
    女性: 「今度は、起きているときにしてね」
    男性: 「ええっ?」
    男性: そう言ったあと、彼女はいたずらっぽく笑う。
    女性: 「私、もう少し自分の体を大切にするわ」
    男性: 「うん。それがいい」
    女性: 「ああ、病院の硬いベッドじゃなくて、
    おうちのリクライニングベッドで眠りたい」
    男性: 「ああ、あれ」
    女性: 「そう・・」
    2人で: 「オーロラ!」
    女性: 「先輩も、ベッド変えたら?」
    男性: 「うん、考えてたんだ」
    女性: 「先輩の給料なら、もっと上位機種にも手が届くでしょ」
    男性: 「いやいや。僕も自分の身の丈に合わせてオーロラさ」
    女性: 「へえ〜、そうなんだ」
    男性: 「僕は所詮ポスドクだし、研究員の給料なんて君もよく知ってるだろ」
    女性: 「じゃあ、2人合算すれば、アップグレードできるかしら」
    男性: 「えっ?」
    言ったあと、オーロラ姫は下を向いてはにかんでいる。
    ひょっとして、僕は王子様になれるのかな。
    顔色が戻ってきた彼女の頬は薄紅色に輝いていた。

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インテリアが家族の絆をつむぎだす・・・ハートフルな一話完結の物語を各前後編に分けてお送りします。(CV/ 男性役=日比野正裕、女性役=桑木栄美里)
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